第28回 問題96

第28回 問題96 事例を読んで、C職員(社会福祉士)に生じる倫理的ジレンマとして、該当するものを1つ選びなさい。
[事例]
社会福祉協議会のC職員は、クライエントのDさん(73歳、女性)の自宅を訪問した際、「マフラーを編んだので、ぜひもらって欲しい」と言われた。C職員は、マフラーをもらうことは物品の受領に当たり、そのことを記録に残さなければならないが、そもそも専門職として倫理的に問題があると考えた。そこでC職員は、「勤務先の規則で禁止されていますので、いただくことはできません」と言った。するとDさんは、「そんな堅いこと言わないで。受け取ってもらえると嬉しいです」と言った。
1 信用失墜行為の禁止と、利用者との関係
2 利用者との関係と、プライバシーの尊重
3 プライバシーの尊重と、最良の実践を行う責務
4 秘密の保持と、記録の開示
5 記録の開示と、情報の共有

社会福祉士の倫理綱領から引用します。

1)利用者に対する倫理責任
1.(利用者との関係)社会福祉士は、利用者との専門的援助関係を最も大切にし、それを自己の利益のために利用しない。
(2.から6. 省略)
7.(プライバシーの尊重)社会福祉士は、利用者のプライバシーを最大限に尊重し、関係者から情報を得る場合、その利用者から同意を得る。
8.(秘密の保持)社会福祉士は、利用者や関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。秘密の保持は、業務を退いた後も同様とする。
9.(記録の開示)社会福祉士は、利用者から記録の開示の要求があった場合、本人に記録を開示する。
10.(情報の共有)社会福祉士は、利用者の援助のために利用者に関する情報を関係機関・関係職員と共有する場合、その秘密を保持するよう最善の方策を用いる。
(11.と12. 省略)
2)実践現場における倫理責任
1.(最良の実践を行う責務)社会福祉士は、実践現場において、最良の業務を遂行するために、自らの専門的知識・技術を惜しみなく発揮する。
(2.から4. 省略)

(倫理綱領と行動規範、日本社会福祉士会ホームページ、https://www.jacsw.or.jp/01_csw/05_rinrikoryo/

4).専門職としての倫理責任
(1. 省略)
2.(信用失墜行為の禁止)社会福祉士は、その立場を利用した信用失墜行為を行わない。
(3.から7. 省略)

(同)

まず「最良の実践を行う責務」と「記録の開示」が含まれている選択肢3・4・5は除外できます。事例の中で、最良の実践ができなくなる、とか、クライエント(Dさん)に対して記録が開示できなくなる、というようなことは起こっていません。

残る選択肢は1と2で、いずれも「利用者との関係」を含んでいます。利用者(Dさん)との専門的援助関係を大切にしようと思えば、Dさんが望む通りマフラーを受け取るのがよいということになります。その場合に、それは信用失墜行為にあたる(選択肢1)かプライバシー侵害にあたる(選択肢2)か?と考えれば、わかりやすいかと思います。

マフラーを受け取ると「社会福祉士が利用者から物品を受領した」「勤務先の規則で禁止されていると言いながら受け取った」ということになり、社会福祉士は支援者という立場を利用して物品を要求するとか、規則を守らない、と思われかねません。

この事例は選択肢1「信用失墜行為の禁止と、利用者との関係」の倫理的ジレンマに該当します。

第28回国家試験 問題96(相談援助の基盤と専門職)
正答1
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