1 クライエント・システムの単位は、小集団に限られる。
2 人と環境との全体的視座から把握される。
3 家族への対応は、援助の全過程で、問題の原因となる構成員に焦点化される。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
5 相談援助の対象としての個人は、システム概念から除外される。
選択肢1・5について
クライエントとして総称される人は、クライエント・システムとされ、これには個人、家族、小集団・組織、地域社会が相当する。
(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座7 相談援助の理論と方法I』、第2版、中央法規出版(2013)、p.30)
クライエント・システムの単位が「小集団に限られる」としている選択肢1は誤りです。また、「個人は、システム概念から除外される」と言う選択肢5も誤りです。
選択肢2について
この「人」を個人としてとらえれば、クライエントを身体機能・精神心理・社会環境的な側面をもつものとして、全体をとらえる考え方が必然となる。このことは、人を全体としてとらえるホリスティックアプローチといえる。
(同)
選択肢2は正しいです。
選択肢3について
例えば、A家族が「ばらばらの状態にあるようにはみえない、あるいはそのようにみなすことができない状況」にあるとき、援助者がこの家族を理解しようとするならば、むりやりにA家族のメンバー各人を独立させて分析する方法は適切ではない。そのような方法は、A家族の全体としての構図を歪めてしまう。唯一の可能な方法として、メンバー間の結合を調べ、それらがいかに相互作用を行っているかを検討することである。援助者がその全体性に介入することで、A家族全体の動きが把握できるのである。
(同、p.88)
特定の構成員だけに焦点化するのは、システム理論に基づく相談援助としては適切ではありません。選択肢3は誤りです。
選択肢4について
それぞれの援助方法の教育を受けた実践者は、専門性を有する実践者として、自分が習得した方法を用い、自分たちが提供できる特定の援助に適合する対象を求めるようになった。(中略)援助を必要としている人々のニーズや希望、状況に応じて実践者の専門的能力が発揮されるのではなく、実践者側からの特定の方法と技術によって対象者の範囲が規定されていたのである。(中略)多様で複雑な生活課題を抱えた人々を全体的に理解するのではなく、実践者の側が対処できるように問題状況を特定し、対象化することになり、ソーシャルワークが本来目指してきた専門性を見失うことになった。そのような反省から、個人、集団、家族、地域といった分野を特定した方法を統合するうえで、システム理論に基づく全体的、包括的な状況の理解の枠組みが提示されるようになった。
(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座8 相談援助の理論と方法II』、第2版、中央法規出版(2014)、p.7)
教科書、なかなかドラマチックに書いてあります。実践者の志向する特定の方法で相談援助の対象を特定する、実践者中心的な視点への反省から、システム理論に基づいた状況理解をするソーシャルワークへと発展していきました。選択肢5は誤りです。
正答2