[事例]
C君(7歳)は、軽度の発達障害がある。友達とうまくコミュニケーションをとることができず、他の児童との良好な関係を構築することが難しい状態である。両親は、このまま小学校に通学させることに対して不安を持つようになり、Y児童発達支援センターの放課後等デイサービス事業を利用することとした。児童発達支援管理責任者のB社会福祉士が、C君とともに作成した支援計画で「友達に対して挨拶ができる」を短期目標とした。今月、この計画作成時に定めた期間を迎えたので、定期モニタリングを実施したところ、挨拶ができていないことが分かった。その理由をC君に尋ねたところ、「あいさつはいや」と答えた。
1 C君とC君の友達との間に問題が生じたと考え、C君の友達に指導を行う。
2 「あいさつはいや」と答えたC君の真意を尋ねるとともに、必要に応じて支援計画の再検討を行う。
3 想定した短期目標を達成していると考え、当面の間、現状の支援を継続する。
4 改訂長谷川式簡易知能評価スケールにより、発達障害の程度を確認する。
5 挨拶はできていないが、それを失敗とするのではなく、引き続きC君を見守るよう、両親に働きかける。
適切なものを「2つ」選ぶ問題です。
選択肢1について
「あいさつはいや」というC君の言葉だけで、友達と問題が生じたと判断するのは早すぎです。また、C君に何も働きかけることなしに、C君の友達だけを指導するのも不自然です。選択肢1は適切ではありません。
選択肢2について
モニタリングで経過を確認したら、必要に応じて再アセスメント・再プランニングが必要になります。「あいさつはいや」という言葉の真意を確認することは再アセスメントの一環です。支援計画の再検討は、まさに再プランニングです。選択肢2は適切です。
選択肢3について
「挨拶ができていないことが分かった」と事例文に書いてあるのに、「短期目標を達成したと考え」という選択肢3は適切ではありません。話きいてましたか?という感じです。
選択肢4について
I.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)について
1974年に作成された長谷川式簡易知能評価スケールは,幅広く臨床の領域で使用されてきたが,その後質問項目と採点基準等の見直しが行われ,1991年に改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)として改訂された.II.使用目的と特徴
一般の高齢者から認知症高齢者をスクリーニングすることを目的に作成されたものであり,記憶を中心とした高齢者の大まかな認知機能障害の有無をとらえることを目的としている.質問項目は9問と少なく,本人の生年月日さえ確認できればおよそ5分~10分程度で施行できる.(加藤伸司、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の使い方、2007年4月21日、日本認知症ケア学会 講義動画配信サイト、http://ninchisyoucareplus.com/plus/pdf/加藤抄録.pdf)
改訂長谷川式簡易知能評価スケールは、発達障害の程度を調べるためのものではなく、認知機能障害の有無を調べるために使われるものです。
発達障害の程度を調べるには、WISC(子ども)、WAIS(大人)などの検査がありますが、モニタリング後というタイミングで検査するのでは遅いと思います。選択肢4は、確認の手段・タイミングともに適切ではありません。
選択肢5について
挨拶ができていないことを両親が失敗ととらえてしまうと、C君を厳しく叱るなどしてしまい、課題解決が遠のく可能性があります。また、どうしていいのかわからないと不安になることもあるので、「見守る」という方針を伝えるとよいと考えられます。選択肢5は適切です。
正答2, 5