第28回 問題86

第28回 問題86 質問紙の作成方法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合、まず、その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で、その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
2 質問項目の順番が後になるほど、回答者の集中力が低下するため、複雑な質問から順に配置することが望ましい。
3 質問紙における回答の形式は、自由回答法を主とし、必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合、想定される選択肢を網羅するため、選択肢の数が多いほど望ましい。
5 キャリーオーバー効果を避けるため、質問の配置は、内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。

私がざっと解いたときは「1の濾過質問は知らないけど2~5が誤りだから1」と考えて1を選びました。

第28回国家試験 問題86(社会調査の基礎)
正答1

選択肢1の「濾過質問」について調べてみました。

ろ過項目を活用する
回答者の知識や経験により回答できるかどうかが決まるような質問文の場合、まず回答者の知識や経験について尋ね、該当者のみに答えさせるやり方もある。このような質問項目をろ過項目(filter question)と呼ぶ。
ex. 「質問 1.あなたは Twitter を利用したことがありますか(はい・いいえ)
質問 2.質問 1.ではいとお答えになった方のみにお聞きします・・・」

(杉原太郎、定量的調査と定性的調査の基礎(第3回)定量的調査(質問紙)および実験による評価、ヒューマンインタフェース学会誌、14(4)、2012、p.286、 http://hdl.handle.net/10119/10858)

ろ過「項目」となっていますが、同じことでしょう。「フィルター質問」も同じですね(もとは英語のfilter questionを訳したものだと思います)。

ろ過質問について「一般的な質問から徐々に調べたい質問に絞る手法」という説明を他のブログで見かけましたが、そういうことではないと思います。濾過質問によって絞られるのは、質問ではなくて回答者です。

さて、選択肢1が正答かどうか判断するためには「専門用語を使う場合に濾過質問をするのは望ましいのかどうか」がポイントです。答えから言えば望ましい、ということになるのですが、どうして望ましいのか考えてみましょう。専門用語を使った質問に濾過質問をつけず、全員に回答してもらうとしたらどうでしょうか。専門用語の意味がわからない人は、面倒になって回答をやめてしまうかもしれないし、適当に答えてしまうかもしれません。そうなると、アンケート調査をしたのに何もわからなかったということになりかねません。それを防ぐために、濾過質問は必要だと言えるでしょう。

選択肢2~5は誤りですが、もしやったらどういう困ったことが起こるか考えてみましょう。

選択肢2(複雑な質問から順に配置)だと、最初のほうで頭が混乱してきて、嫌になって回答をやめる人が出てくるかもしれません。

選択肢3(自由回答がメイン)だと、回答に時間も手間もかかって回答をしない人が出てくるほか、集まった回答を集計・分析するにも手間がかかって大変です。

選択肢4(選択肢はなるべく多く)だと、回答者が面倒になって全部の選択肢を見てくれないかもしれませんし、選択肢の配置が回答の傾向に影響を与えそうです。もし選択肢が100もあったら、全部見ていられなくて最初の20くらいの中から適当に選ぶ人も出てくるでしょう。

選択肢5(質問はランダムに配置)ではキャリーオーバー効果を避けられません。質問の順番が回答の傾向に影響を与える可能性があるからこそ、順番は考えて決めないといけません。

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