第28回 問題124

第28回 問題124 「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針」(厚生労働省)におけるリスクマネジメントに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 リスクマネジメントの基本は、危機管理体制の確立よりも個別事故への対応である。
2 利用者から苦情が寄せられたときは、迅速に対応しなければならない。
3 事故が発生した場合、職員は周囲に動揺を与えぬよう、事故内容をできる限り秘匿すべきである。
4 事故を防止するためであれば、利用者へのサービスの質が向上しなくてもやむを得ない。
5 重大な事故に至らないものであれば、その内容を記録化し、分析する必要はない。

「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」は厚生労働省ホームページで閲覧できます。

「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0422-2.html

選択肢1について

昨今、福祉サービスの分野で議論されているリスクマネジメントは、「福祉サービスを提供する過程における事故の未然防止や、万が一にも発生した場合の対応(特に損害賠償等、法人・施設の責任問題を含む)」にその中心がおかれています。
 本検討会では、検討を進めるにあたり福祉サービスにおける事故防止をどのように進めたらよいかや万が一にも事故が発生してしまった場合の対応はいかにあるべきか、といったテーマを念頭に、この指針もそれらに重点をおいて取りまとめた内容になっています。

(福祉サービスにおける危機管理に関する検討会、福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針~利用者の笑顔と満足を求めて~、2002年3月28日、http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0422-2.html

どちらかがどちらかよりも重要であるという話ではなく、事故の未然防止と万が一発生したときの対応をすること自体が危機管理(リスクマネジメント)の中心であると書かれています。選択肢1は誤りです。

選択肢2について
苦情対応の原則のひとつとして「迅速性」が挙げられています。

苦情対応が迅速になされなければ、利用者の不満は高まるばかりでせっかくの苦情解決体制も意味のないものになってしまいます。苦情を受けた際に「後で調べます」「後で検討します」という対応によって、ますます利用者の感情を損ねたという例もあります。どの程度、迅速に対応したかによって、利用者との信頼関係形成には大きな差が生じることになります。より迅速な苦情対応は利用者との円滑なコミュニケーションを助長し、より一層の信頼関係の形成を促進します。

(同)

選択肢2は正しいです。

選択肢3について

事故の知らせを受けた家族等が一番初めに共通して持つ強いニーズは、「事実を知りたい」ということです。そのためにも事故が発生した場合には、できるだけ早いうちに関係した職員から事情を聞くなどして、事実の確認と記録が行われる必要があります。職員が関係して発生した事故の場合、その職員も気が動転していますので、前後の記憶が定かではないことも想定されます。事実把握には迅速性が求められます。なお、施設の責任が問われかねない事実だからといって隠蔽したり、改ざんすることは厳に慎むべきであることは言うまでもありません。
 そして、調査した結果に基づいて、家族等に事故の発生状況やその後の対応について事実を十分に説明します。その際の受け答えにも誠意ある態度で臨むことが基本となります。
(中略)
事故が発生した直後の対応としては、利用者の救命や安全確保を最優先にしつつ、医療機関との連携と家族等に対する連絡という2つの対応を的確かつ迅速に行うことが求められます。

(同)

事故内容を不特定多数に知らせる必要はありませんが、迅速に事実確認・記録をして、関係者には秘匿することなく伝えることが重要です。選択肢3は誤りです。

選択肢4について

基本的な視点は「クオリティーインプルーブメント(QI)」
本検討会では「クオリティーインプルーブメント(QI)」を基本的な視点として福祉サービスにおけるリスクマネジメントのあり方についての検討を行ってきました。これまでは、ともすると「リスクマネジメント=損害賠償対策・対応」という捉えられ方がなされることがあったことも否定しがたく、特に前述のような特性をもつ福祉サービスにおいてはこのように矮小化した捉え方は適切ではありません。福祉サービスにおけるリスクマネジメントは、「より質の高いサービスを提供することによって多くの事故が未然に回避できる」という考え方で取り組みを進めることが大変重要です。

(同)

事故防止はサービスの質を犠牲にしなければ実現できないということではなく、サービスの質を高めることは事故防止にもつながる、という考え方です。選択肢4は誤りです。

選択肢5について

事故防止策を検討するためには、現状を的確に把握する必要があり、そのためには施設内で起こった事故を把握するほか、事故につながりそうになった事例(ヒヤリ・ハット事例)を収集して活用することが有効であるとされています。施設においてもその有効性が認識されはじめ、各施設では独自の取り組みを始めているところも多く見られるようになってきました。

(同)

重大な事故に至らないものであっても、記録・分析することが事故防止につながる場合があります。選択肢5は誤りです。

第28回国家試験 問題124(福祉サービスの組織と経営)
正答2
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