1 マグレガー(McGregor, D.)のY理論では、従業員の働く意欲が低いのは、組織の管理者側に原因があるとされる。
2 ハーズバーグ(Herzberg, F.)の動機づけ理論では、労働条件への不満を改善することで、職務に対する満足感を高められるとされる。
3 マクレランド(McClelland, D.)の欲求理論では、権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが、高い業績につながるとされる。
4 ブルーム(Vroom, V.)の期待理論では、管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが、従業員の動機づけを高めるとされる。
5 ロック(Lock, E.)の目標設定理論では、「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで、高い意欲を生み出すとされる。
人名と理論の名前はすべて正しくマッチしています。
選択肢1について
X理論
「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」という考え方。この場合、命令や強制で管理し、目標が達成できなければ懲罰といった、「アメとムチ」による経営手法となる。Y理論
「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」という考え方。この場合、労働者の自主性を尊重する経営手法となり、労働者が高次元欲求を持っている場合有効である。(XY理論、Wikipedia日本語版、https://ja.wikipedia.org/wiki/XY理論)
性善説と性悪説のようなもので、Y理論は「人間は本来、働きたがる」という前提なので、もし働く意欲が低い人がいたら、それは本人の問題ではなく組織の管理者側に問題があるということになるでしょう。選択肢1は正しいです。
選択肢2について
ハーズバーグは、人間の欲求における、不快を回避しようとする欲求と、よりいっそうの成長と自己実現を求める欲求とは異質なものであり、それらの欲求を充足するものも異質のものであるという仮説のもとに調査をし、次のような理論を提唱した。(中略)動機づけ要因(満足要因)と衛生要因(不満足要因)は同一線上にはなく、いくら不満足要因の解消に努めても決して満足な状態にはならないこと、したがって仕事に対して満足感を得るためには、動機づけ要因による動機づけが重要であることを主張している。
(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座11 福祉サービスの組織と経営』、第4版、中央法規出版(2014)、p.167)
ハーズバーグの動機づけ要因・衛生要因理論では、不満を改善することと、満足度を高めることは別であるという考え方です。選択肢2は誤りです。
選択肢3について
Wikipedia英語版からの引用になってしまいますが、マクレランドの欲求理論(need theory)では、人のモチベーションには達成欲求(need for achievement)、親和欲求(need for affiliation)、権力欲求(need for power)の3つが関わっているとされています。
Need for achievement
(中略) Achievement based individuals tend to avoid both high risk and low risk situations. Low risk situations are seen as too easy to be valid and the high risk situations are seen as based more upon the luck of the situation rather than the achievements that individual made.(Need theory、Wikipedia英語版、https://en.wikipedia.org/wiki/Need_theory)
ざっと訳すと、達成欲求をもつ人は高リスクの仕事も低リスクの仕事も好まない、つまり中程度のリスクの仕事を好むということです。「権力欲求を持つ人」としている選択肢3は誤りです。
選択肢4について
ブルームらによる期待理論は、誘意性と期待の「積」つまり掛け算した結果がモチベーション(やる気)になるという理論です。どちらかがゼロだと、もう一方が大きくてもやる気につながりません。
誘意性(valence)というのは、何か目標を達成することに対してその人が見出す価値のことです。同じ目標を達成しても感じ方は人それぞれですから、この見出される価値は主観的なものです。期待(expectancy)というのは、目標達成の見込み、可能性のことです。同じ目標でも、達成できると思うか無理だと思うかは人それぞれで、こちらも主観的なものです。「あなたならできるよね」などと他人から寄せられる期待ではありません。「管理者が従業員に対して」の期待を示せば動機づけを高めるとしている選択肢4は誤りです。
選択肢5について
提唱者ロックらの論文のアブストラクト(概略)から引用します。
Results from a review of laboratory and field studies on the effects of goal setting on performance show that in 90% of the studies, specific and challenging goals led to higher performance than easy goals, “do your best” goals, or no goals. Goals affect performance by directing attention, mobilizing effort, increasing persistence, and motivating strategy development. Goal setting is most likely to improve task performance when the goals are specific and sufficiently challenging, the subjects have sufficient ability (and ability differences are controlled), feedback is provided to show progress in relation to the goal, rewards such as money are given for goal attainment, the experimenter or manager is supportive, and assigned goals are accepted by the individual.
(Locke, Edwin A.; Shaw, Karyll N.; Saari, Lise M.; Latham, Gary P. (July 1981), Goal setting and task performance: 1969–1980, Psychological Bulletin 90 (1): 125, doi:10.1037/0033-2909.90.1.125, retrieved 2010-06-01, http://datause.cse.ucla.edu/DOCS/eal_goa_1981.pdf)
目標設定理論では、
・目標が明確で、十分に高い目標であり、
・仕事に取り組む人に目標を達成する能力があり、
・目標に対する進捗のフィードバックがあり、
・目標達成に対する報酬(お金など)があり、
・管理者等が仕事に取り組む人への支援に協力的で、
・仕事に取り組む人が割り当てられた目標を受け容れている
ときに、目標設定(goal setting)が成果(performance)につながると考えます。「頑張れ」といった励ましや、「前よりも上回る成績を」といった不明確かつ高くもない目標設定(どれくらい上回るのか不明、0.01%上回るだけでも目標達成と言える)で成果につながるとは言えません。選択肢5は誤りです。
正答1