1 研究対象について、非参与的に観察し、研究を行うものである。
2 質的調査が用いられ、質問紙調査のような量的調査は用いられない。
3 目的は、科学的な因果関係の検証である。
4 計画、実施、事実発見の循環が、基本プロセスとして提唱されている。
5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結びつけてはならない。
選択肢1・3について
教科書では、「参与観察とアクションリサーチ」という項がありました。
参与観察とは、研究者が調査対象になる人々やその活動の場面に関与して、見聞きした事象を記録にしていくことである。研究者の関与の程度に違いはあるものの、研究者がいることは対象者に十分認識されている。(中略)一方、アクションリサーチとは、研究者がフィールドに積極的に関与して、何らかの問題を解決していくものととらえられている。参与観察の主たる目的は研究知見の生産であるのに対して、アクションリサーチはフィールドの問題解決を目指している。アクションリサーチを参与観察と同じ項において説明するのは、アクションリサーチが、基本的には参与観察を伴うからである。
(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座5 社会調査の基礎』、第3版、中央法規出版(2014)、pp.127-128)
「非参与的に」観察すると言う選択肢1は適切ではありません。また、アクションリサーチの目的は問題解決なので、「科学的な因果関係の検証」としている選択肢3も適切ではありません。
選択肢2について
アクションリサーチは、普遍的な心理・法則性の同定ではなく、極めて価値指向的であるということである。(中略)第2の点は、研究者と調査対象(者)とが融合しながら調査を進めていくことである。(中略)アクションリサーチとは、上記2点を満たした調査の方向性であり、特定のデータ収集の方法が用いられるわけではない。したがって、アクションリサーチは質的調査を必ずしも意味せず、上記の二つの条件を満たすのであれば、量的調査を採用しても何ら支障はない。
(同、p.129)
「量的調査は用いられない」としている選択肢2は適切ではありません。
選択肢5について
調査で得られた知見を実践に結びつけて、問題を解決することがアクションリサーチの目的です。選択肢5は適切ではありません。
選択肢4について
消去法で選択肢4が正答ということになるわけですが、選択肢4に該当するような文章は教科書の中には見当たりませんでした。インターネット検索をすると、看護分野の研究成果報告書のなかで、ホロウェイという人の言説が取り上げられていました。
アクションリサーチは,計画,実施,および事実の発見,評価までを循環させながら進めていくプロセスである(ホロウェイ, 2000).
(岡村典子、科学研究費補助金研究成果報告書、2009年6月22日、https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19791659/19791659seika.pdf、p.2)
ホロウェイの2000年の著作とは何を指すのか、上記の報告書には書誌情報が載っていないのでわかりませんが、インターネット検索をした限りでは、2006年出版の下記の本の初版のことを指しているのではないかと思われます。
ホロウェイ/ウィーラー著、野口美和子監訳『ナースのための質的研究入門 研究方法から論文作成まで』、第2版、医学書院(2006)
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=5576
正答4