防衛機制のことを適応機制、防御機制と書いている参考書もありますが、同じものです。第29回国家試験では、「適応機制」という言葉がつかわれました。
防衛機制(適応機制)とは、不安や欲求不満な気持ちを抱えたときに、それを軽減しようとして無意識に働く心理的メカニズムです。防衛機制の分類や名称は学派によってさまざまだそうですが、国家試験に出るのは代表的なものだけです。お手持ちの教科書、参考書に載っているものを覚えれば大丈夫です。
代表的な防衛機制
(1)抑圧
容認しがたい感情・体験などを、無意識的に、意識にのぼらせないようにすること。
(例)嫌な思い出は無意識のうちに忘れている「そんなことあったっけ?」
(2)合理化
自分の失敗や欠点などに都合のいい理由づけをすることで、失敗したというつらい気持ちや劣等感から逃れようとすること。
(例)イソップ寓話『すっぱい葡萄』
(3)同一視(同一化、取り入れ)
他者の望ましい属性を、自分自身のことのようにみなし、同じ行動などをすることによって満足や安定を得ようとすること。
(例)憧れのアーティストが愛用しているブランドと同じブランドの服を買って着る。
(4)投影(投射)
同一視(同一化)の逆で、自分のなかの容認しがたい欲求、衝動、弱点などを他者の中に見出して、それを指摘したり非難することによって不安を解消しようとすること。
(例)本当は自分が相手を嫌っているのだけれど「私はあの人から嫌われている」
(5)反動形成
抑圧された欲求や願望とは正反対の行動をすること。
(例)好きな子に意地悪をしてしまう。嫌いな人に好意的にふるまう。
(6)逃避
不安や緊張をもたらす状況を回避することによって、一時的に自分を守ろうとすること。
(例)学校に行きたくなくてお腹が痛くなり、欠席する。
※このうち、未熟な発達段階に戻った言動をすることで不安を避けようとすることを「退行」という。
(例)弟/妹が生まれて親の注意がそちらに向き寂しいので、赤ん坊のような言動をして親の気を引く。
(7)置き換え(転移)
ある対象に向けられていた感情や態度が、別の代理の対象に向けて表現されること。
(例)上司に対する不満や怒りを、部下に当たり散らす。子どもが独立してペットを溺愛する。
(8)補償
欠点があるとき、別の面で人より優越することで、弱点や劣等感を補おうとすること。
(例)勉強が苦手なので、スポーツで努力する。
(9)昇華
社会的に認められない欲求や衝動が生じたとき、芸術やスポーツといった社会的・文化的に承認される高次な価値を実現することによって満足しようとすること。
(例)失恋して自暴自棄になったが、つらい気持ちを絵にぶつけ芸術作品を制作した。
(国家試験での出題)
29-012、27-010、26-013