第28回 問題110

第28回 問題110 相談援助の方法の一つであるケアマネジメントにおけるケアプラン作成の基本原則に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 フォーマルサービスを主に活用して作成する。
2 費用負担の調整は、作成後に行う。
3 アセスメントに基づいて設定した目標に即して作成する。
4 クライエントや家族の要望どおりに作成する。
5 専門職が連携して最終段階まで練り上げてから、クライエントと家族の同意を得る。

選択肢1・2・3・5について

ケアプランを作成する際の基本となる原則があるが、それについて、シュナイダー(B. Schneider)は、以下の7点をあげており、これに解説を加えることとする。
①ケアプランは、前段階で実施されたクライエントの包括的な機能的アセスメント結果に基づく(中略)
②ケアプランには、クライエントないしは家族成員などの代理人がその作成過程に参加する(中略)
③ケアプランは、前もって決められたケース目標に向けられる(中略)
④ケアプランは、永続的なものではなく、特定期間の計画である(中略)
⑤ケアプランには、フォーマルなサービスとインフォーマルなサポートの両方が含まれる(中略)
⑥ケアプランは、クライエントないしは家族の負担額を意識して作成される(中略)
⑦ケアプランの内容は、定型化された計画用紙に文書化される(後略)

(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座8 相談援助の理論と方法II』、第2版、中央法規出版(2014)、pp.41-42)

教科書には「シュナイダー」に脚注がついていて、出典として次のように書いてあります。
——
Schneider, B., ‘Care Planning: The Core of Case Management’, Generations, XII(5), p.16, 1998.
——
インターネット検索してみたところ、この雑誌の出版年は1998年ではなく1988年だとわかりました。(自戒をこめて)引用して出典を書くときは正確に!

選択肢1について
シュナイダーの原則の⑤です。

ケアプラン作成にあたっては、それぞれの社会資源が有している特性を活かしていく必要がある。特に、フォーマル・サービスとインフォーマル・サポートではその特性に大きな違いがあり、前者は公平で標準的なものであるのに対して、後者は柔軟でミニマムを超えた支援が可能であるといった違いがある。そうした違いを活かしてケアプランを作成することにより、クライエントの生活の質が高まるといえる。

(同、p.42)

フォーマルとインフォーマルをうまく組み合わせて活用することが求められるので、「フォーマルサービスを主に」としている選択肢1は適切ではありません。

選択肢2はシュナイダーの原則の⑥です。

制度によっては、個々のサービスごとに自己負担額が決められていたり、サービス総体として利用できる限度額が決められている。他方、クライエントやその家族は、経済状況や自らの価値観により、どの程度の経済的な自己負担をするかの考え方も異なる。ケースマネジャーは、そうしたクライエント本人や家族の自己負担の可能性を見極めながらケアプランを作成し、最終的に支払える自己負担額について、本人や家族からの同意を得ることが不可欠である。

(同、p.42)

費用のことを考えずにあれもこれもと支援を盛り込んで、最後に費用のことを考えて利用するサービスを削ったり替えたりすると二度手間です。選択肢2は適切ではありません。

選択肢3はシュナイダーの原則の①と③です。

ケアプラン作成における具体的なプロセスは、以下の五つの段階に分けることができる。
①生活ニーズを明らかにする。(中略)
②援助目標を明らかにする。
ここでは、明らかになった生活ニーズに対してどのような方向でニーズを解決するかという援助の目標や結果を提示することになる。この援助目標は、1年や2年といった長期間の目標と、1か月や2か月といった短期間の目標に分けて支援を展開していくことも可能である。その際、このような援助の目標や結果は、第一には実現可能なものでなければならず、さらにできる限り可視的で数値的な基準でもって具体的な目標を定めることが望ましいとされている。なぜなら、そうした目標になれば、クライエントも、ケースマネジャーやサービス提供者も、明確な目標に向かって活動できるからであり、評価しやすいからである。
③支援となる社会資源を明確にする(中略)
④頻度や時間数を明記する(中略)
⑤クライエントの自己負担額を算定する(中略)
以上の①~⑤の段階を経て、ケアプランの作成がなされることになる。

(同、pp.42-43)

選択肢3は適切です。

選択肢5はシュナイダーの原則の②です。ソーシャルワーカーが問題を解決するのではありません。問題を解決する主体はあくまでクライエントで、ソーシャルワーカーなど専門職の支援者は援助する立場です。専門職だけでプランを最終段階まで練り上げるとする選択肢5は適切ではありません。

選択肢4について

ケアプランは、クライエントの生活課題(生活ニーズ)に基づいて作成されるものであり、ケースマネジメントはニーズ優先アプローチでなければならないとされており、サービス優先アプローチであってはならないとされている。

(同、p.40)

要望(wants)と必要(needs、ニーズ)は分けて考える必要があります。クライエントやその家族の主訴はたいてい要望(wants)で、それはニーズと一致していることもありますが、ニーズは別のところにある場合もあります。ケアマネジャーは、アセスメントを通してニーズを把握し、ニーズ充足のためのプランを作成することになります。「要望通りに」と言う選択肢4は適切ではありません。

第28回国家試験 問題110(相談援助の理論と方法)
正答3
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