1 個人と国家にとって社会的安寧が最も基礎的な権利であることを認識し、国内外の社会経済的政策の立案に積極的に関与する。
2 貧しい人々が経済および社会開発を自ら組織化し、促進する義務を果たさなければならないことを再確認する。
3 高齢者が最も貧困の危機に直面しており、しばしば「極度の貧困」に耐えていることを認識する。
4 衣食住に対する基本的ニーズが充足されなければ、政治的そして市民としての権利はほとんど意味をなさないと断言する。
5 他機関と連携し、アドボカシーとケースマネジメントの技能を駆使して「極度の貧困」を軽減するソーシャルワーク活動を開始し、また支援するよう努める。
国家試験で出る以前にIFSWの国際方針文書を読んだことがある受験生が果たしてどれくらいいたのか…このような問題は難問奇問の類なので、本番では勘でマークしてかまいません。IFSW関係の国際方針文書を網羅しようと思ったらものすごく広範囲にわたるうえ、試験に出るとしても1問(1点)ですから、他のもっと基本的な知識を固めて得点を積み重ねるほうがよいと思います。
さて、今回の国際方針文書の原典はどこでしょう?と思って調べてみると、日本ソーシャルワーカー協会が日本語版を発行しているらしいことがわかりました。(下のリンクは国立国会図書館の書誌情報ページです。)
国際ソーシャルワーカー連盟 編著、日本ソーシャルワーカー協会・国際委員会 監訳『国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)ポリシーペーパー「国際方針文書」 : 多様な社会問題に対する国際的な視点』、日本ソーシャルワーカー協会(2011)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011131753-00
貧困撲滅という言葉が出ていないことから察するに、他の社会問題(児童、障害者、難民、人権など)に関するポリシーペーパーも一緒にひとつの本にまとめられているのではないかと思います。
この問題に限って言えば、「貧困撲滅とソーシャルワーカーの役割に関する国際方針文書」の中の「政策声明」だけが必要なので、それだけインターネット上で見えればいいのですが…と思いながら探していたらIFSWのホームページに(英語ですが)掲載されていることがわかりました。
Policies > Poverty eradication and the role for social workers
http://ifsw.org/policies/poverty-eradication-and-the-role-for-social-workers/
6つに区切った構成になっていて、最後の6つ目が Policy statement(政策声明)です。
選択肢1について
6.1 IFSW recognizes that human rights are fundamental to all persons, as individuals and collectives and these rights can not be guaranteed when almost a billion people around the world live in extreme poverty.
6.2 IFSW believes that national and international social and economic policies must be directed towards reducing extreme poverty and pledges to advocate for policy changes that would unconditionally support this goal.(Poverty eradication and the role for social workers、IFSWホームページ、2010年1月付、2012年2月23日掲載、http://ifsw.org/policies/poverty-eradication-and-the-role-for-social-workers/)
言われていることを抜粋すると「IFSWは、人権はすべての人の基礎になるものと認識する」「国内外の社会経済的政策は貧困撲滅に向かって運用されるべきと考える」ということです。社会的安寧の話は出てきませんし、IFSW自体が政策立案に積極的に関与するとは言っていません。選択肢1は誤りです。
選択肢2について
IFSW reaffirms the rights of poor people to organize and promote economic and social development for themselves and their children.
(同)
IFSWが再確認しているのは、貧しい人々が経済および社会開発を自ら組織化し促進する「rights(権利)」であって、義務とは言っていません。選択肢2は誤りです。
選択肢3について
6.8 IFSW recognises that women and children are often most at risk of poverty, and children often bear the brunt of extreme poverty.
(同)
最も貧困の危機に直面しているのは「women and children(女性と子ども)」であって、高齢者とは言っていません。選択肢3は誤りです。
選択肢4について
6.6 IFSW affirms that all people are entitle to have their basic needs for food, clothing and shelter met and that political and civil rights have little meaning when these basic needs are unmet.
(同)
選択肢4は正しいです。
選択肢5について
6.7 IFSW seeks to collaborate with others and use advocacy and community organisation skills to initiate and support social work efforts to eradicate extreme poverty.
(同)
「advocacy and community organisation skills(アドボカシーとコミュニティオーガニゼーションの技能)」を駆使すると言っており、アドボカシーとケースマネジメントの技能とは言っていません。
正答4