国民健康保険では、被保険者本人とは別に、世帯員に国民健康保険の被保険者がいる世帯の「世帯主」にいろいろと役目があります。
国民健康保険法の条文を見てみましょう。
第九条
被保険者の属する世帯の世帯主(以下単に「世帯主」という。)は、厚生労働省令の定めるところにより、その世帯に属する被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項その他必要な事項を市町村に届け出なければならない。
ある人が新たに国民健康保険の被保険者になったり、被保険者でなくなったりしたら、(本人ではなくて)その世帯の世帯主が届け出をしなくてはいけないということです。
第七十六条
保険者は、国民健康保険事業に要する費用(前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等並びに介護納付金の納付に要する費用を含み、健康保険法第百七十九条 に規定する組合にあつては、同法 の規定による日雇拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、世帯主又は組合員から保険料を徴収しなければならない。ただし、地方税法 の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。
難しく書いてありますが、国民健康保険の保険料の納付義務者は(被保険者本人ではなくて)世帯主だということです。
具体的な話をします。私は結婚したときに、それまで勤めていた職場を退職して(この時点で元勤務先の健康保険の被保険者資格を喪失しました)、転居し、しばらくの間は雇用保険の失業給付をもらいながら求職していました。失業給付は夫の健康保険の被扶養者になるには多かったので、国民健康保険の被保険者資格を取得したことになりました。(世帯主は夫でも妻でもよいのですが)家計を維持しているのが夫だったので、夫を世帯主としていました。
この結果どうなったかというと、私が国民健康保険の被保険者になったことを、(被保険者本人である私ではなく)世帯主である夫が届け出ることになりました。また、保険料の払込書も、世帯主である夫あてに郵送されてきました。実質的には、役所に行って届け出書類を書いたのは私でしたし、保険料を払い込んだのも私でしたが、制度上(形式上)は世帯主である夫がしたことになっています。
今のところ、我が家にはトラブルはないからよいものの、もしも夫からのDVで避難していたりしたら、困るでしょうね…保険料を払おうとしても、その書類がDV加害者のところに届いているわけですから。おそらく、役所で事情を申し出ればある程度の対応はしてくれるでしょうが、たらい回しにされたり異様に待たされたり、根掘り葉掘り聞かれたりするのでは、あるいは相手にされないのではと不安にもなるでしょう。そういう相談の窓口にも、ソーシャルワーカーが必要だろうと思います。
(国家試験での出題)
27-055、24-050