第25回 問題108

第25回 問題108 事例を読んで、Mソーシャルワーカー(社会福祉士)の効果測定に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
[事例]
 エイズ治療拠点病院に勤めるMソーシャルワーカーは、日常的にHIV感染者やエイズ患者にかかわることが多い。HIV感染を告知された人の多くは、ショックを受け、絶望感を感じ、不安にさいなまれる。Mソーシャルワーカーは、これまで、そのようなクライエントへの支援として危機介入を行ってきた。
 Mソーシャルワーカーは、自分の危機介入のあり方が本当に役立っているのか確認するために、病院の倫理審査委員会に諮った上で、効果測定を行うことにした。
1 これまで担当したクライエント全員に、Mソーシャルワーカーの対応に関するクライエントの考えを匿名で自由に記述して返送してもらう郵送調査を行う。
2 患者の不安に焦点を当てて、介入の前後でどのように変化したかをケースごとにモニターし複数ケースの傾向をみる。
3 クライエントのエイズについての理解度が深まったか調べるために、現在、支援しているクライエントにアンケート調査を実施する。
4 主治医と家族に、クライエントの現在の様子についてインタビューする。
5 一般病院に協力を得て、そこでHIV感染を告知された患者グループとMソーシャルワーカーが支援した患者グループを比較しその違いを検証する。

「最も適切」な選択肢を1つ選ぶ問題です。正答以外の選択肢でも、この事例でなければ適切である場合もある選択肢があります。

この事例では、Mソーシャルワーカーが効果測定をする目的は「自分の危機介入のあり方が本当に役立っているのか確認するため」です。では、どのような危機介入のあり方だったかといえば、HIV感染を告知されてショックを受け、絶望感を感じ、不安にさいなまれるクライエントへの支援としての危機介入でした。Mソーシャルワーカーの危機介入によって、クライエントの「ショック」「絶望感」「不安」が改善したかを確認できる選択肢2が正答となります。

選択肢1について
テーマを絞らずに、ぼんやりと「Mソーシャルワーカーの対応」についての考えを尋ねる調査票では、ショック・絶望感・不安が改善したかを確認することができません。もし、効果測定ではなく、職員の接遇に対する満足度調査であれば、選択肢1のやり方でもいいかもしれません。

選択肢3について
選択肢の中に書いてあるとおり「クライエントのエイズについての理解度が深まったか調べるために」と調査目的が変わってしまっています。ショック・絶望感・不安が改善したかを確認するやり方としては適切ではありません。

選択肢4について
主治医や家族から情報収集することも有用ではありますが、クライエント本人からの情報収集に優先するものではないと思います。「最も適切」とは言えない選択肢です。

選択肢5について
患者グループを比較、と言って集団比較実験計画法のような、なんとなく正答っぽい雰囲気を出している選択肢ですが誤りです。Mソーシャルワーカーの危機介入に効果があったかを調べるには、介入の前と後、少なくとも2つの時点でのクライエントの状態を観察しなくてはなりませんが、この選択肢ではそのようなことが書いてありません。また、この選択肢では患者グループを分ける分類基準があいまいで、「一般病院でHIV感染を告知され、Mソーシャルワーカーの勤めるエイズ治療拠点病院を紹介されてMソーシャルワーカーの支援を受けている患者」は、どちらの患者グループに入るのかという問題があります。

第25回国家試験 問題108(相談援助の理論と方法)
正答2
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