量的研究と質的研究

量的研究(量的調査)について

量的調査とは、調査対象の集団(例えば、日本の高齢者)から、ある規模(例えば、1000人分)の数値化できるデータを集め、その集めたデータから元の調査対象の集団の性質を統計学的に探ろうという調査である。

(社会福祉士養成講座編集委員会編、『新・社会福祉士養成講座5 社会調査の基礎』、第3版、中央法規出版(2014)、p.56)

質的研究(質的調査)について

質的調査とは、質的データの分析を通して、現象の記述、仮説生成あるいはモデル生成を目的とする調査のことである。質的データとは、数字には還元しない言語によって記述されたデータのことである。例えばインタビュー、アンケートの自由記述、観察記録などがある。

(前掲書、p.110)

量的・質的という言葉は、研究(調査)で収集・分析するデータの種類を区別しています。データが数値データ(物質の血中濃度や、現象の頻度、経過時間、知能検査の点数など)であれば量的研究です。数値にならない、言語で記述されたデータであれば、質的研究です。

「データが1事例しかない(量がない)からこれは量的研究ではない(質的研究である)」という考えは誤りです。

インタビューやアンケートなどは個別の事情に基づいた結果が出る場合が多く、条件を同じにして他のケースと比較したり、同じ人から再度データを取ったりすることが困難です。そのため、質的研究で仮説を立てることはできても、その仮説を検証するには、質的研究は向きません。

 知りたい事柄ができたら、まず、誰からどのような情報を得たいのかを考えてみよう。例えば、介護問題ならば、現在介護を受けている人、介護をしている家族、専門的な介護従事者、介護のシステムを支えている行政の担当者、さらには、一般の納税者、といろいろな調査対象者が考えられる。次に、質的調査と量的調査のどちらで得られる情報であるかを考える。知りたいことが、例えば「地域包括支援センターという言葉をきいたことがあるか?」のように、はっきりとした基準に従って答えられる問いで得られる情報であれば、量的調査が適している。それに対して、基準や問題そのものを対象者の語りから得ようとする場合ならば、(中略)質的調査が適しているだろう。1回の調査で、いくつかの問いを尋ねること、また、主な問いに対する影響を与える事柄を併せて知りたいことが普通なので、一つの調査が、量的調査の部分と質的調査の部分との組み合わせでできていることも多い。

(前掲書、p.56)

どちらかの手法がいつも優れているということはなく、何を知りたいか・明らかにしたいかによって調査手法を選んだり、組み合わせたりすることになります。

ちなみに、「質的データを収集するインタビューや観察などと、量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法」を、ミックス法と言います。(第27回社会福祉士国家試験 問題89 選択肢2)

(国家試験での出題)
28-089(選択肢2)、27-089(選択肢2)、27-090、27-117、26-090、25-090(選択肢1)、24-081(選択肢4)、24-082、24-098(選択肢3)、23-083、22-083

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