役割○○

「役割○○」を教科書の索引で見てみるとたくさんの用語が載っています。多いし難解ですが、過去に国家試験に出題されたことがある項目だけでも…と思って確認しました。

(1)役割期待

第29回 問題20
(問題文と選択肢1 省略)
2 役割期待とは、個人の行動パターンに対する他者の期待を指し、規範的な意味を持つ。
(選択肢3から5 省略)

いわゆる「○○らしさ」に近い概念だそうです。地位(上司、部下)や職業(医師、教師、主婦)、性別や親子関係などの役割それぞれに寄せられる期待があります。

(2)役割葛藤

第27回 問題21 役割葛藤の説明に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(選択肢1から4 省略)
5 保有する複数の役割間の矛盾や対立から心理的緊張を感じること

例えば、外科医という役割は、自分の担当する手術の日は執刀することが期待されますが、医師であると同時に「子」という役割もあって、自分の親が危篤だというときには何をおいても駆けつけることが期待されて、板挟みになってしまいます。

(3)役割距離

役割演技において、役割から距離をおくことに自己の主体性の表現や、社会の期待と自己のニーズとのズレの表現を見いだしたゴッフマンの概念。

(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座3 社会理論と社会システム』、第3版、中央法規出版(2014)、p.154)

インターネットで具体例を調べると、「医者/教師/アスリート/アーティストが大事な手術/授業/試合/本番中に冗談を言う」というものが多く出てきます。これは、「真剣に課題に取り組むことを期待される」医者などの「役割」とは相反する「冗談を言う」行為によって、役割と本来の自分との距離を示し、それによって自分を表現しているのだそうです。

(4)役割分化

社会システムを維持・発展させるために必要な課題が行為内容ごとに区分されていく過程。例えば、小集団の維持/発展において、手段的課題と表出的課題が区分される、などである。

(社会福祉士養成講座編集委員会編、前掲書、p.154)

抽象的で、私もよく理解しているとは言い難いです。考えてみたのですが、「昔は地域の長老1人が、町内会長であり就労支援事業者であり結婚相談員であり教師であった→今ではそれぞれの役割が別々の人のものへと分化している」みたいなことでしょうかね?(よくわかりません)

(5)役割取得

他者の役割の取得に自我の形成の基礎をおくミードのオリジナルな概念。

(社会福祉士養成講座編集委員会編、前掲書、p.154)

これも抽象的でわかりにくいですが、他者の役割を演じることで自己が形成されていく、ということのようです。個人的には、国家試験の選択肢(下記)が一番わかりやすいと思いました。

第25回 問題20 (問題文と選択肢1から4 省略)
5 個人が、他者や集団の観点から自身を見て自らの行為のあり方を形成していく過程を、「役割取得」という。

(6)役割適応

行為者が、他者あるいは社会システムからの役割期待に応えている状態。反対の状態が役割不適応。

(社会福祉士養成講座編集委員会編、前掲書、p.154)

(7)役割演技
一般的に「役割演技」というとロールプレイング法という教育/治療の方法のことですが、ここでは、人の行為に「演技」としての側面を見出したゴッフマンの概念です。スパッと説明している資料が見当たらないのですが、

ゴッフマンによれば、「パフォーマー」としての行為者は「オーディエンス」である他者の前で「パフォーマンス」を演じている

(社会福祉士養成講座編集委員会編、前掲書、p.145)

ということで、「役割演技とは役割を演じること」という、言葉そのままと考えていいと思います。

(国家試験での出題)
29-020、27-021、25-020、22-021(選択肢3)

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