生活困窮者自立支援法は、2015(平成27)年4月1日から施行された新しい法律(制度)です。
第2条で、「生活困窮者」の定義がされています。
第二条 この法律において「生活困窮者」とは、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。
最低限度の生活を維持することが【できなくなるおそれのある】者、というのがポイントです。
生活保護制度では、生活困窮者の定義条文はありませんが、扶助について定めた条文がそれぞれ「○○扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。 」となっています。最低限度の生活を維持することの【できない】者を対象にしているということです。
ということは、生活困窮者自立支援制度は、「困窮しているが生活保護制度を利用するほどまでは困窮していない」、生活保護の手前の人を想定しているということです。
生活困窮者自立支援制度は、生活保護制度の見直しと連動しています。生活困窮者自立支援制度を説明する厚生労働省の資料にも「生活保護制度の見直しと新たな生活困窮者対策の全体像」という図があります。
生活が困窮しかねない状況には、まず社会保険のセーフティネットで対応します。もし、社会保険のセーフティネットからこぼれてしまった場合には、これまでの制度枠組みでは生活保護で対応するしかありませんでした。その状態を見直し、社会保険と生活保護の間にもう1枚「生活困窮者支援」のセーフティネットを張ろうという発想です。
生活困窮者自立支援制度の中には、福祉事務所設置自治体が必ずしなくてはならない事業(必須事業)と、必須事業以外にもできる事業(任意事業)があります。
必須事業
・生活困窮者自立相談支援事業(第4条)※委託可
・生活困窮者住居確保給付金の支給(第5条)
必須事業については、国は費用の3/4を負担します(第9条第1項)。
任意事業(第6条)
・生活困窮者就労準備支援事業
・生活困窮者一時生活支援事業
・生活困窮者家計相談支援事業
・生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業
・その他生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業
任意事業のうち、就労準備支援事業、一時生活支援事業については、国は費用の2/3以内を補助することができます(第9条第2項第1号)。その他の任意事業(家計相談支援事業、学習援助事業、他)については、国は費用の1/2以内を補助することができます(第9条第2項第2号)。
それぞれの事業の定義は第2条第2項~第6項で定められています。自立相談支援事業は3種類が想定されていたり、住居確保給付金は「就職のために住居確保」というのが前提だったり、名称だけではわからないこともあるので、一度、条文に目を通しておくことをお勧めします。