児童虐待の件数は、どこが一次情報?と思いながら調べていくと「子ども・若者白書(旧青少年白書)」に行き当たりました。
2015年12月現在の最新版は2013(平成25)年度の数値です。「平成27年版 子ども・若者白書」は内閣府ホームページで閲覧できます。(厚生労働省じゃないんですね)
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html
「第5章第2節 犯罪や虐待による被害」のなかの「2 児童虐待の状況」で、児童虐待に関する数値が出ています。児童相談所における児童虐待相談対応件数と、児童虐待事件検挙件数では、様子が違っています。
まず、児童相談所における児童虐待相談対応件数について。
全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は,増加の一途をたどり,平成25(2013)年は73,802件となっている。(第1-5-8図(1))
児童相談所への相談対応件数が増えたことで「発生件数が増えた」とは言えませんので注意が必要です(可能性として、昔から多く発生していたことには変わりなく、社会の認識が変わったので相談されることが増えたとも考えられます)。虐待案件として相談される数が増加傾向にある、ということは押さえておきましょう。ぜひ、子ども・若者白書のページでグラフ(第1-5-8図(1))を見てみてください。10年で2倍くらいに増加しています。
虐待の内容 19 では,心理的虐待が38.4%と最も多く,次いで身体的虐待が32.9%,ネグレクト(26.6%),性的虐待(2.1%)の順となっている。この5年をみると,身体的虐待やネグレクトの割合が低下し,心理的虐待の割合が上昇している。(第1-5-8図(2))
「虐待の内容 19」ってなんだ、という話ですが、これには脚注が付いていまして、虐待の類型を説明してくれています。児童虐待の4類型を復習しておきましょう。
19 児童虐待の定義は以下の通り(厚生労働省ホームページより)
身体的虐待:殴る,蹴る,投げ落とす,激しく揺さぶる,やけどを負わせる,溺れさせる,首を絞める,縄などにより一室に拘束する など
性的虐待:子供への性的行為,性的行為を見せる,性器を触る又は触らせる,ポルノグラフィの被写体にする など
ネグレクト:家に閉じ込める,食事を与えない,ひどく不潔にする,自動車の中に放置する,重い病気になっても病院に連れて行かない など
心理的虐待:言葉による脅し,無視,きょうだい間での差別的扱い,子供の目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)など
子どもの年齢によって、虐待の内訳に差があるようです。
被虐待児の年齢ごとに相談種別の構成割合をみると,相対的に,心理的虐待やネグレクトは低年齢児に多く,年齢が上がるにつれて身体的虐待や性的虐待が増えている。(第1-5-8図(4))
養育できない親に子どもが生まれた場合、生まれてすぐに養育放棄する、というのはなんとなくわかります。性的虐待が年齢が上がると増えるのも、あまり小さい子どもだと性的な特徴が発達していない、ということでわかる気がします。子どもの年齢が上がると心理的虐待が減り身体的虐待が増えるのは、子どもにも力が付いてきて、言葉だけでは言うことをきかせることができなくなって力ずくになるということでしょうか。
虐待者の割合も数値が出ています。
主たる虐待者をみると,実母が54.3%と最も多く,実父が31.9%と続く。実父の割合が緩やかに上昇している。(第1-5-8図(5))
ニュースになるような虐待は、血縁関係のない父(母親の再婚相手や交際相手)からが多いような気がしていましたが、実母がトップです。
さて、警察が検挙した児童虐待事件について見てみましょう。
警察が検挙した児童虐待事件で被害に遭った子供は増加傾向にあり,平成25(2013)年は475人となっている。このうち,死亡した子供は25人である。(第1-5-9図(1))
被害者の年齢をみると,検挙事件全体では4歳以下が約2割であるが,死亡事件では約8割を占めている。(第1-5-9図(3))
検挙事件全体では、10歳以上の子どもが6割近くいるのに対して、死亡事件では12%です。ただ、死亡事件の被害児童は25人なので、1人違えば4%も数値が変わりますから、あまりパーセンテージにこだわるのはよくないかもしれません。こちらも子ども・若者白書のページでグラフ(第1-5-9図(3))を見てみてください。
児童相談所への相談では心理的虐待がトップでしたが、警察が検挙した事件では身体的虐待が7割でトップです。
態様別にみると,身体的虐待が全体の70.7%,性的虐待が21.9%を占め,児童相談所における相談対応件数の内訳と比べ,身体的虐待と性的虐待がかなり多い。(第1-5-9図(2))
心理的虐待や、ネグレクトは、表向き見えにくいのが関係しているのではないかと思います。
虐待者の割合は、警察が検挙した事件では実父がトップです。ただし、死亡事件では実母がトップです。
加害者と被害者の関係をみると,検挙事件全体では実父が約4割,実母が約2割となっているが,死亡事件では実母が4割を超えている。(第1-5-9図(4))