労働安全衛生法の改正で、ストレスチェック制度が2015(平成27)年12月1日から施行されました。
厚生労働省が、「こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」で、特設の情報ページを設けているようです。
http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html
たくさんの資料があって、Q&Aもあって、詳しいのですが、どこまで見たらいいのやら…理想は全部見ることですが、受験生はそうも言っていられません。
とりあえず、説明会資料(4月22日公表)を見てみました。わかりやすくまとめられたスライドがありました。
まず、制度の目的。労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)が主な目的です。高ストレス状態の次のステージとしてメンタルヘルス不調がある、という考え方らしく、ストレスチェックによって高ストレス状態の人(でも、まだメンタルヘルス不調には至っていない状態の人)を見つけて、対処を促すことで、メンタルヘルス不調にならないように予防するということのようです。
ストレスチェックを実施する義務があるのは「事業者」で、労働者がチェックを受ける義務があるという話では【ありません】。ここで、「事業者」は「労働者数50人以上の事業者」のことで、労働者数が50人未満の事業者については、当分の間努力義務だそうです。
ストレスチェックは、調査票に労働者が記入する形を取ります(自記式調査)。調査票は、
規則第52条の9第1項第1号から第3号までに規定する3つの領域に関する項目が含まれているものであれば、実施者の意見及び衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事業者の判断により選択することができる
そうですが、
なお、事業者がストレスチェックに用いる調査票としては、別添の「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましい。
とも書いてあります(スライド番号17)。とすると、必ずしも「職業性ストレス簡易調査票」を使わなくてもいいわけです。でも、ほとんどの事業者は、「職業性ストレス簡易調査票」を使うようになる気がします。
※「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」は、同じく「こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」に掲載されています。英語版もあります。
労働者自身のストレスへの気づきを促すのが目的のため、
検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。
検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。
また、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることも目的のため、
面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となります。
労働者といってもいろいろで、フルタイムの正社員ばかりの世の中ではありません。通達が出ていて、説明会資料の中に載っています(スライド番号15)。
事業者がストレスチェックを行うべき「常時使用する労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
①期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
②週労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
「1週間の所定労働時間数の4分の3以上」というのは、正社員の労働時間が40時間なら30時間以上ということになります。パートやアルバイトでも対象になる可能性はありますが、1年未満の有期契約の労働者や、労働時間が週30時間未満の労働者は対象になりません。
本人が同意し事業者に提供された検査結果は、事業者が5年間保存することが義務です。本人が同意せず実施者が保管する検査結果は、実施者が5年間保存することが望ましく、事業者は保存が適切に行われるよう必要な措置をとる義務があります。(スライド番号31・32)
ここで紹介したスライド以外にも、たくさんの情報が載っているので、スライドが64枚ありますが一度は見てみるとよいと思います。
メンタルヘルスケアに関しては、これまでにも国家試験で出題されたことがあります。社会福祉士の資格を取るための試験で事業者の義務などについて問われるのは、社会福祉士は組織の管理や経営に関わって事業者側の立場になるかもしれないので、知っておいてほしい、という意図もあるのかもしれません。
事業者側の立場になる予定はない、という人も、労働者にはなるでしょうし、相談援助職の人はうつ病になりやすいという話もあるので、自らのメンタルヘルスに関して自覚的であったほうがいいでしょう。また、クライエントがメンタルヘルスケアを必要としている場合に、過去にストレスチェックや医師の面接を受けていただろうか?などと考えを巡らせることも必要だと思います。
(国家試験での出題)
27-125、24-118