扶助費と民生費

地方公共団体の歳出を目的別にみると、民生費が2007(平成19)年からずっとトップです。

民生費の構成比は、社会保障関係費の増加を背景に上昇しており、平成19年度以降最も大きな割合を占めている

(平成28年版地方財政白書 第1部2地方財政の概況、総務省ホームページ、http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/28data/2016data/28czb01-02.html

日常生活の中で「民生費」という言葉はほぼ遣わないと思うので、民生費がトップ、と言われても何だかよくわかりません。総務省発行の地方財政白書の中の用語説明では、↓こんな感じです。

民生費
目的別歳出の一分類。地方公共団体は、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、障害者等のための福祉施設の整備、運営、生活保護の実施等の施策を行っており、これらの諸施策に要する経費。

ざっくりとしたイメージとしては、「社会福祉の実施に要する費用」と思えばいいわけです。

ところで、過去問をやっていると、「民生費」にまじって「扶助費」という言葉が出てきます。「市町村の民生費の性質別内訳では扶助費がトップ」と。あれ?トップは民生費っていう話はどうなったの?そもそも扶助費って何だっけ?と思います。「扶助費」も日常生活の中で遣う言葉ではないですよね。地方財政白書の中の用語説明は、↓こんな感じです。

扶助費
性質別歳出の一分類で、社会保障制度の一環として地方公共団体が各種法令に基づいて実施する給付や、地方公共団体が単独で行っている各種扶助に係る経費。
なお、扶助費には、現金のみならず、物品の提供に要する経費も含まれる。

これを読むと、扶助費も「社会福祉の実施に要する費用」ということになってしまい、「民生費と扶助費、何が違うの?」と混乱します。

注目すべきは、民生費が「目的別歳出の一分類」で、扶助費が「性質別歳出の一分類」であるということです。分類基準が違います。

どういう目的のために使ったのかを考えるとき、教育費、土木費、総務費、…という分類と並んで「民生費」があります。

歳出がどういう性質なのかを考えるとき、まずは義務的経費・投資的経費・その他の経費の3つに大きく分けられ、「義務的経費」をさらに分類するとき、「人件費」「扶助費」「公債費」と分かれます。

つまり、「民生費であり、かつ、扶助費でもある」という歳出も考えられます(生活保護など)。民生費と扶助費は、切り口が違うので、「民生費がトップ」と「扶助費がトップ」は矛盾しません。

地方財政白書は、総務省のホームページで閲覧できます。「民生費の中の扶助費の割合」は、第1部の4(地方経費の内容)に該当します。
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/index.html

(国家試験での出題)
28-045、25-045、23-045、22-044

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