民生委員と児童委員は国家試験で頻出です。ここでは、民生委員について書きます。
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民生委員の根拠法は民生委員法です。
第一条 民生委員は、社会奉仕の精神をもつて、常に住民の立場に立つて相談に応じ、及び必要な援助を行い、もつて社会福祉の増進に努めるものとする。
2000(平成12)年の改正までは「保護指導にあたる」という文言だったのですが、改正によって「相談に応じ、必要な援助を行う」となりました。
何をしている人なのか、というのを一言で表すのは難しいのですが、現在の日本の地域福祉を支えている存在だと思います。
第十四条 民生委員の職務は、次のとおりとする。
一 住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと。
二 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
三 援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。
四 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。
五 社会福祉法 に定める福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)その他の関係行政機関の業務に協力すること。
2 民生委員は、前項の職務を行うほか、必要に応じて、住民の福祉の増進を図るための活動を行う。
第14条第1項第5号で、民生委員は「福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力する」とあります。
生活保護法でも、「市町村長、福祉事務所長または社会福祉主事の事務の執行に協力する」とあります。
第二十二条 民生委員法 (昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員は、この法律の施行について、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとする。
かつては行政の「補助機関」でしたが、現在では【協力機関】ですので注意しましょう。
民生委員は、市町村(特別区を含む)の区域に置かれます(第3条)。この区域には特に名称はありません。担当区域が民生委員の住んでいる区域とは限りませんが、基本的には住んでいる区域を担当していると思います。
民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村(特別区を含む)の区域ごとに、その区域を管轄する市町村長の意見を聴いて、【都道府県の条例】で定めることになっています(第4条)。
民生委員は、都道府県知事が推薦し、【厚生労働大臣】が委嘱します(第5条第1項)。都道府県知事は、民生委員推薦会が推薦した者について推薦します。その際、地方社会福祉審議会の意見を聴くよう努めるものとされています(第5条第2項)。
任期は3年で、給与はありません(第10条)。
厚生労働省の民生委員・児童委員参考データによると、2013(平成25)年3月31日現在で約23万人の民生委員・主任児童委員が委嘱されており、その男女比はだいたい男4:女6です。
歴史的には次のような背景があります(こちらは出るとしたら「現代社会と福祉」で出ると考えられます)。
・ドイツのエルバーフェルト制度を参考にした。
・日本で先行していた取り組みとして、済世顧問制度と、方面委員制度がある。
・済世顧問制度は岡山県知事の笠井信一が1917年に設置した。
・方面委員制度は、翌1918年に大阪府知事の林市蔵のもとで、小河滋次郎が設置した。
事例問題では、地域包括支援センターなどで働く社会福祉士のところへ相談案件を持ち込む人として登場することがあり、選択肢では「民生委員にゆだねる」とか丸投げされていたりします。相手が民生委員かどうかに関わらず、事例問題で「○○にすべて任せる」など丸投げするような選択肢は誤りであることがほとんどです。
(国家試験での出題)
30-096、29-038、28-039(選択肢2)、27-036(選択肢1)、27-110、26-035、26-096、26-110、26-112、25-035、25-091、25-134、24-037(選択肢4)、24-105、23-024(選択肢2、選択肢4)、23-037、23-086、22-034(選択肢2)、22-036(選択肢3)、22-058(選択肢2)