オッズ比とオッズ

「オッズ比」という言葉が第27回の国家試験で出ました(問題87)。当時は「きいたことはある」程度で、正誤の判断ができるような知識はなかったので早々に捨て問と思ってあきらめましたが、改めて勉強してみました。

とりあえず日本語版Wikipediaを見てみました。本当はもっと信頼できるソースがほしいところですが、パッと見当たらなかったので…

オッズ比(オッズひ、Odds ratio)は、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である。
オッズとは、ある事象の起こる確率をpとして、p/(1−p)の値をいう。確率論のほかギャンブルでも盛んに使われてきた数値である。(中略)オッズ比はある事象の、1つの群ともう1つの群とにおけるオッズの比として定義される。事象の両群における確率をp(第1群)、q(第2群)とすれば、オッズ比は

https://ja.wikipedia.org/wiki/オッズ比

ある事象の起こる確率をpとしているので、(1-p)というのは「ある事象が起こらない確率」です。

クロス集計表では、ある事象が起こる「度数」(確率ではない)が書かれることが多いので、クロス集計表のなかのどのセルがオッズで、どのセルがオッズ比、というように対応しているわけではありません。度数から確率を計算し、2つの確率の「比」を計算しないとオッズは求められませんし、2つのオッズの「比」を計算しないとオッズ比は求められません。

第27回問題87は、解答速報を出している各社の間で見解が分かれました。多数派は選択肢1を正答と予想していましたが、公式に発表された正答は選択肢3でした。

第27回 問題87 クロス表とその分析に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(選択肢1と2 省略)
3 オッズ比とは、ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
4 オッズ比の最大値は、1である。
5 オッズ比の最小値は、-1である。

選択肢3をパッと読むと、「起こるほうを、起こらないほうで割る」という感じで、それってオッズ比じゃなくてオッズ、つまりp/(1-p)のことじゃないの?選択肢3は誤りじゃない?という感じがします。

が!よ~く読むと、「確率」ではなくて「確率比」と書いてあります。選択肢3の文だけでは「ある事象が起こる確率比」がどの確率とどの確率の比のことを言いたいのかわかりませんが、たぶん、2つの群が想定されていて、「1つの群で、ある事象が起こる確率と、もう1つの群で、ある事象が起こる確率の比=p/q」「1つの群で、ある事象が起こらない確率と、もう1つの群で、ある事象が起こらない確率の比=(1-p)/(1-q)」と言いたいのだと思います。

だとすると、選択肢3の「ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったもの」というのは、
(p/q)÷{(1-p)/(1-q)}
=(p/q)×{(1-q)/(1-p)}
=p(1-q)/q(1-p)
というわけで、これは確かに「オッズ比」と同じ値です。なので、選択肢3は正しいということになります。
(しかしまあ、オッズとオッズ比の違いを知っている人ほど混乱して間違ってしまうような選択肢は悪問だと思います。「たぶんこう言いたいんだろう」と推測した上に式変形をしないと定義式と一致していることがわからないなんて…)

選択肢4、選択肢5は、誤りです。
p=1のときは、1-p=0で、オッズが定義できません。同様に、q=1のとき、1-q=0で、オッズが定義できません。また、q=0のとき、q/(1-q)=0となり、オッズ比が定義できません。これ以外の、0≦p<1かつ0<q<1のとき、0<1-p≦1かつ0<1-q<1で、オッズ比は0から無限大までの値をとります。

(国家試験での出題)
27-087

広告
広告
広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

広告
広告