社会福祉士の秘密保持義務は、社会福祉士及び介護福祉士法の第46条に規定されています。
第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
日本社会福祉士会の倫理綱領にも、同様の文章があります。
1)利用者に対する倫理責任
8.(秘密の保持)社会福祉士は、利用者や関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。秘密の保持は、業務を退いた後も同様とする。
秘密保持義務との関連で、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)について国家試験で問われたことがあります。
個人情報保護法の第2条第1項で、「個人情報」が定義されています。
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
個人情報保護法では、「生存する個人に関する情報」とはっきり書かれているので、亡くなった方についての情報は原則として保護の対象外です。社会福祉士及び介護福祉士法では、「その業務に関して知り得た人の秘密」とだけ書かれているので、亡くなった方についての情報をどう扱うかは明確ではありません。
国家試験で、個人情報保護法と一緒に出たことがあるのが、厚生労働省のガイドラインです。第24回では「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン(平成16年11月)」、第26回では「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成25年3月)」が出ました。これらのガイドラインは、個人情報保護法では明確ではない部分についても言及しています。
亡くなった方についての情報に関しては、次のような記述があります。文中の「法」とは個人情報保護法を指します。
死亡した個人の情報については法の対象とされていないが、福祉サービスの利用者が死亡した後においても、福祉関係事業者が当該者の情報を保存している場合には、漏えい、滅失又はき損等の防止を図るなど適正な取扱いに取り組むことが期待されている。また、死亡した個人に関する情報が、同時に、遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合には、当該生存する個人に関する情報として法の対象となる。
(福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン(平成16年11月)、http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/161130fukusi.pdf)
生存しない個人の情報については法の対象とされていないが、福祉サービスの利用者が死亡した後においても、福祉関係事業者が当該者の情報を保存している場合には、漏えい、滅失又は毀損等の防止を図るなど適正な取扱いに取り組むことが期待されている。また、家庭環境に関する情報のように、生存しない個人に関する情報が、同時に、遺族等の生存する個人に関する情報に当たる場合には、当該生存する個人に関する情報として法の対象となる。
(福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成25年3月)、http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf)
つまり、亡くなった方の情報については、不適切な扱いをしても違法ということにはならないようです(もちろん、法的な拘束力はなくても適正な扱いをすることが望まれますが)。また、亡くなった方に関する情報が遺族など「生存している個人」に関わる情報でもあるときは、法の対象ですから、不適切な扱いをすれば違法です。
(国家試験での出題)
26-117、24-110