[事例]
Cさん(82歳、女性)は、自宅で夫(85歳)と二人暮らしをしている。Cさんは認知症を患っているが、ある程度の判断能力はある。これまでCさんの身の回りの世話は夫が行ってきたが、夫が持病を悪化させ、半年ほど入院することになった。夫は、Cさんを近隣の施設へ入所させる意向がある。Cさん夫婦には息子がいるが、遠方に住んでいるため、今のままではCさんの身の回りの世話をすることはできない。息子は、Cさんを自分のところに引き取り、同居することを望んでいる。そこで、Cさんと話し合うことになった。
1 「Cさんは今後の暮らしをどのようになさりたいですか」
2 「施設に入所してはいかがでしょうか」
3 「息子さんと同居することが良いと思います」
4 「Cさんが一人で決めるべきです」
5 「私(B介護支援専門員)が決めます」
事例文の中では、Cさんの夫と、Cさんの息子の意向は書かれていますが、Cさん本人がどうしたいかは明らかにされていません。
選択肢1と4が、Cさんの意向を優先する方向の発言です。選択肢2はCさんの夫、選択肢3はCさんの息子、選択肢5はB介護支援専門員の意向を優先する方向の発言です。専門職としての社会福祉士は、個人の尊厳を尊重することが求められますから、まずCさん本人の意向を無視している選択肢2・3・5は適切ではありません。
残る選択肢1と4のどちらかを選ぶわけですが、ここで日本社会福祉士会の「社会福祉士の行動規範」を見てみましょう。
5.利用者の自己決定の尊重
5-1.社会福祉士は、利用者が自分の目標を定めることを支援しなければならない。
5-2.社会福祉士は、利用者が選択の幅を広げるために、十分な情報を提供しなければならない。
5-3.社会福祉士は、利用者の自己決定が重大な危険を伴う場合、あらかじめその行動を制限することがあることを伝え、そのような制限をした場合には、その理由を説明しなければならない。(公益社団法人日本社会福祉士会、社会福祉士の行動規範、https://www.jacsw.or.jp/01_csw/05_rinrikoryo/#02)
社会福祉士は、利用者の自己決定を尊重しますが、それは、何もしないということではなくて、利用者が自分で決めるための支援をするということです。選択肢4は、Cさんが一人で決めるべき、つまりB介護支援専門員は何も手伝わないという発言です。選択肢4は適切ではありません。
Cさんの意向をそのまま実現するかどうかは別として、まずはCさんの意向を尋ねる、選択肢1が適切です。
正答1