1 ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークの主要三方法を統合する視座を示した。
2 システムの中心を個人とみなし、個人の変化に焦点化する方法を示した。
3 クライエントの自己への評価の低さに伴う否定的な感情に注目する視座を示した。
4 現実は社会的に構成されるという見方を示した。
5 精神の力動性に着目し、パーソナリティの変容を目指す視座を示した。
選択肢1について
適切です。
選択肢2について
システム理論では、個人はシステムの最小単位で、個人を内包する家族やグループ、さらにそれを内包するコミュニティもシステムであるととらえます。また、「状況のなかの人」という考え方をし、個人の変化だけに焦点化するわけではありません。選択肢2は適切ではありません。
選択肢3について
過去の国家試験で、正答となっている選択肢に次のようなものがあります。
(選択肢1と2 省略)
3 知的再体制化を中心とした認知行動療法では、クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し、その認知的枠組みや信念を修正する。
(選択肢4と5 省略)
ちょっと語弊があると思うのですが、認知行動療法は、いきなり否定的な感情に注目しているのではありません。根底に自己評価の低さがあるとき、ものごとの捉え方(認知)が不合理なものになって(認知のゆがみが生じて)、否定的・不快な感情が起こると考えます。例えば「ありがと」とぶっきらぼうに言われたとき、「そういう人なんだろう」「今日は何か嫌なことがあったのかな」と思って気にしない人もいれば、「私があの人の気分を害した」「私は嫌われている」と思ってつらくなる人もいます。それは捉え方(認知)が異なるからです。そこで、認知に注目し、ゆがみがあれば、認知的枠組みや信念を変えることによって、否定的・不快な感情を低減させようというアプローチです。
今回の選択肢3も、おそらく認知行動療法の説明というつもりで出題されたものと思われます。選択肢3は適切ではありません。
選択肢4について
これは社会構成主義アプローチの説明です。選択肢4は適切ではありません。
選択肢5について
リッチモンドのケースワークの特徴は、その人と環境との間を意識的に調整すること、それにより、その人のパーソナリティを変容・発達させることにあり、その際、クライエントの社会的状況とパーソナリティを正確にとらえる社会診断が重要視される。リッチモンドによるケースワーク理論はその後、フロイト(S. Freud)の精神分析理論の強い影響を受け、ハミルトン(G. Hamilton)や、トール(C. Towle)らによって診断主義派アプローチとして発展し、その後は心理社会的アプローチとして継承されている。
(社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座8 相談援助の理論と方法II』、第2版、中央法規出版(2014)、p.144)
「精神の力動性」はひとまずおいておいて、「パーソナリティの変容を目指す」のは心理社会的アプローチです。選択肢5は適切ではありません。
正答1