第29回 問題130

第29回 問題130 次の事例を読んで、高次脳機能障害に対する排泄の介護に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
[事例]
 Kさん(68歳、女性)は、交通事故によって高次脳機能障害の診断を受けた。受傷後、特別養護老人ホームで暮らしている。四肢の障害はない。場所の見当識障害があり、尿意を感じた時に、トイレの場所が分からなくなり、間に合わず失禁することが増えた。また、注意障害があり、二つのことが同時にできない。失認症状も見られる。
 施設内のケース会議で排泄の支援方法を再検討した。
1 トイレの場所が分かるように矢印などで示した。
2 本人の排尿リズムを考慮した時間ごとに、トイレに誘導するようにした。
3 部屋にポータブルトイレを置くようにした。
4 排泄時に着脱しやすい服装を勧めた。
5 常時、オムツを着けるようにした。

適切なものを「2つ」選ぶ問題です。当初、各社が予想した解答が割れた、いわゆる「割れ問」でした。

四肢の障害はないということから、通常のトイレまで歩くことや、通常のトイレで排泄するという動作自体は可能と思われます。選択肢3(ポータブルトイレ)、選択肢5(常時オムツ)では、Kさんができることまで奪うことになり、適切ではありません。

次に選択肢1を除外します。なぜなら、事例文の中でKさんには「失認症状も見られる」と書かれているからです。失認症状というのは、感覚器(例えば目)からの感覚刺激(光)は正確に入力されているにもかかわらず、対象物を認識することができない状態です。物が見えていてもそれが何かわからなかったり、視野の左右どちらかの半分が認識できなかったり(半側空間無視)します。矢印などでトイレを示しても、失認症状のあるKさんには、トイレの場所が認識できない可能性があります。

残る選択肢2と4が正答ということになります。これらの選択肢も、ベストな方策というわけではありませんが、消去法で残るものを選びます。

第29回国家試験 問題130(高齢者支援と介護保険制度)
正答2,4
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