[事例]
大学3年生のGさん(21歳、女性、未婚)は、妊娠3か月であることが分かった。Gさんは、自分が通う大学の学生相談室を訪れ、F相談員が対応することになった。Gさんによれば、子の父親とは音信不通になっている。Gさんは出産し、子育てをしていくことを強く希望しているが、周囲には賛成してくれる人はいない。大学は卒業したいと考えているが、親には頼れず、経済的な不安がある。Gさんは、「どうしてよいか分からない」と語った。
1 主治医と連絡を取り、Gさんが出産するかどうかの意思決定支援を一任する。
2 大学の関係部署と連携し、学業と子育てを両立するための方策を検討する。
3 学業を優先する必要があるため、出産、子育ては断念するように助言する。
4 特別養子縁組制度の活用を勧め、仲介してくれる機関を紹介する。
5 子の父親を捜し出し、認知してもらうように説得する。
事例文だけでは、Gさんが話した内容(子の父親とは音信不通、出産して子育てをすることを強く希望、大学は卒業したい、親には頼れない)をどの程度、事実と考えてよいのかわかりません。本来であれば、「Gさんからさらに詳しく話を聴く」という対応が必要だと思いますが、この問題の選択肢にはそういう方向の選択肢がないので、基本的にはGさんの話が事実である(虚偽や誇張はない)と考えて、消去法で解きます。
選択肢1について
もし出産の段階でGさんが意識不明になった、とかであれば、そのときの処置については医師に一任するということもあり得ますが、今はそういう段階ではありません。選択肢1は適切ではありません。
選択肢3について
学業と出産とどちらを優先するか、あるいは両立を目指すのかは、F相談員ではなく、Gさんが決めることです。選択肢3は適切ではありません。
選択肢4について
事例文によれば、Gさんは自分で子育てをすることを強く希望しています。特別養子縁組制度は、Gさんが自分で子育てをすることを支援する制度ではなく、この場面で活用を勧めるべきではありません。選択肢4は適切ではありません。
選択肢5について
この場面で、子の父親に認知してもらうと、生まれてきた子どもの戸籍に父親の名前が記載されます。Gさんと、その男性に婚姻関係がなくても、男性と子どもの間に、法律上の親子関係ができます。したがって、子どもの養育費を男性に請求できます。それ自体はいいことかもしれませんが、まだ産むかどうかも決めていない段階でやることではありません。選択肢5は適切ではありません。
なお、文末が「説得する」であることからも、選択肢5は正答ではない選択肢として作られたのだろうと考えられます。
以上のように考えると、Gさんの希望通りの(学業と子育ての両立を目指す)選択肢2が残ります。ただし、あくまで、試験問題として考えた場合の正答は選択肢2だというだけで、もし実際にこのようなケースに対応するとしたら、Gさんからもっと詳しく話を聴く必要があることには留意しましょう。
正答2